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「優秀論文賞」選考結果のご報告

「優秀論文賞」選考結果のご報告

「実験社会心理学研究」編集委員長 常任理事 五十嵐 祐

本年度の優秀論文賞の選考対象論文は、「実験社会心理学研究」第64巻1号及び2号に掲載された原著論文5編、展望論文1編、Short Note 4編の計10編でした。これらの中から優秀と考えられる論文3編を選び、1位から3位まで順位をつけて投票するよう、7月31日を締め切りとして編集委員にお願いしました。選考対象論文の著者である編集委員を除き、20名の編集委員による投票が行われました。優秀論文賞選考規程に従って、1位票3点、2位票2点、3位票1点として集計しました。その結果を基に、8月18日に優秀論文賞選考委員会を開催して協議を行い、下記2篇の論文に優秀論文賞を授与することに決定いたしました。

辻本昌弘(2025).事例研究における事例の選択について 実験社会心理学研究, 64(2), 70–83.https://doi.org/10.2130/jjesp.2402(原著)

崔邱好・石井敬子(2025).セルフディスタンシング研究:文化心理学の観点からの展望 実験社会心理学研究, 64(2), 84–101.https://doi.org/10.2130/jjesp.2405(展望)

辻本論文は、事例研究における代表性への批判に対し、事例選択の基準を「極限的か」や「代表性があるか」ではなく「理論的意義」と「実践的意義」の観点から判断すべきという新たな枠組みを提示したものです。質的研究の一般化可能性について説得力のある論証を展開し、社会心理学を超えて広く社会科学の方法論に貢献する、今後の研究の発展に資する優れた論考として高く評価されました。

崔・石井論文は、セルフディスタンシング研究を体系的にレビューし、従来の個人内過程中心の検討から文化・社会的な視点への展開の必要性を議論したものです。文化心理学的な知見を精査したうえで、個人の感情調節が文化・社会の規範維持にどう寄与するかというマイクロ-マクロ・ダイナミクスの視点を明確にし、東アジア研究の必要性など、今後の展望も示された点が高く評価されました。

辻本先生、崔先生、石井先生におかれましては、このたびの受賞、誠におめでとうございます。今後ますますのご活躍とご研究のご発展をお祈り申し上げます。

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